市販の丸鋸で木材を切断しているとき、
「騒音が大きい」と感じることはありますか?
本記事では、スライドソー用の丸鋸を
自作する方法を解説しています。
「騒音を抑えて木材を切断したい」という方は、
是非本記事をご覧ください。
また、「スライド式丸鋸の作製」については、
以下の記事で解説しています。
静音丸鋸の説明
以下の仕様・性能で製作しました。
基本設計として、「小出力 / 静音」で作るため、
大きな負荷のかかる用途には不向きです。
[性能]
・騒音「56~71dB」 (丸鋸から1m離れた地点)
・切断深さ 28mm程度(鋸刃径:100mm)
[仕様]
・小出力(300W)のモーターを使用
⇒ パワーを下げる代わりに静音を向上させる
・「丸ベルト」により回転を伝動
⇒ プーリーの径でも自在に回転数を変更できる
丸鋸本体の作製①:骨組み
「伝導機構部分」と「鋸刃部分」を左右に分離します。
これによって、「丸鋸の小型化・メンテナンス性向上」の効果があります。
[使用した材]
① MDF9mm : 「85mm × 105mm」 2枚
② ベアリング : 「内径10mm、外径26mm」 2個
③ MDF5.5mm : 「85mm × 180mm」 2枚
①MDFに穴あけ加工を施し、
②ベアリングを接着剤で固定します(下画像)。
(※横幅105mm:鋸刃径+5mm程度で設計)
[ベアリング用接着剤]
乾燥すると弾力のある状態になります。
メンテナンス時には、引き剥がすことが可能です。
左:Amazonで購入する方が安いです。
右:ホームセンターで購入する方が安いです。
そして、③MDFを接着剤で貼り付けます(下画像)。
(※ベアリングを固定している板は9mm厚の方が、
組み立て精度が向上しやすいです。)
伝動機構の導入
鋸刃の回転軸を変更するための加工を行うことで、
「切断深さの増加 / 振動削減」の効果が得られます。
[使用した材]
④ スピンドルモーター:「300W」 1基
⑤ 回転軸 : 1本
⑥ アルミプーリー :「内径8mm、外径30mm」 1個
⑦ アルミプーリー :「内径10mm、外径30mm」 1個
⑧ 丸ベルト :「径5mm、周長150mm」 1輪
まずは、④モーター/⑤回転軸を丸鋸に装着して、
⑥⑦プーリー/⑧丸ベルトを装着します(下画像)。
プーリーを固定したら、「ベアリング – シャフト」を
接着剤で固定します。
(※シャフト – ベアリングの僅かな隙間が振動発生を招きます。)
[回転軸固定用の接着剤]
メンテナンス時には、金槌で叩いて取外しできます。
振動発生を抑えることができる強度でもあります。
回転軸の作製
治具製作編では詳しく述べていませんでしたので、
ここで見ていきます。
[使用した材]
・ アルミ丸棒φ25:「長さ2cm程度」 1個
・ シャフトφ10 :「長さ15cm程度」 1本
まずは、アルミ丸棒 (20mm)に旋盤加工を行います(下画像参照)。
「M6のタップ (5mm分)」と「φ10 (15mm分)」
接着剤を塗布したシャフトを差し込み、固定します(下画像参照)。
そして、旋盤加工で鋸刃取付部分を切ります(下画像参照)。
[回転軸作製用の接着剤]
メタルロック:金属同士の固定に特化。非常に強く接着できます。
鋸刃が飛ばないためにも、しっかりとした物を使います。
丸鋸本体の作製②:箱型化
[使用した材]
⑨ MDF9mm :「実寸合わせ」 1枚
⑩ MDF5.5mm :「85mm × 実寸合わせ」 2枚
⑨MDFを実寸合わせで切り取り、
ブッシュを取り付ける穴をあけます(下画像)。
そして、丸鋸の底面に接着剤で固定して、
リニアブッシュを取り付けます(下画像)。
その後、丸鋸上面にモーター線用に
穴をあけておきます(下画像赤枠)。
仕上げに、⑩MDFをテープで固定して(下画像赤枠)、
底面をアルミテープで覆います(下画像)。
性能試験
丸鋸本体が完成したので、「静音性能」をみていきます。
(※バッテリーの導入を考慮した電圧としています)
[騒音・振動]
10.8V (2700rpm) : (0m 72dB, 4.1 / 1m 61dB, 1.3)
14.4V (3600rpm) : (0m 76dB, 4.4 / 1m 60dB, 1.5)
18V (4500rpm) : (0m 79dB, 4.5 / 1m 70dB, 2.1)
[切断性能]
切断深さ:32mm程度(鋸刃100mm径)
使用した部品
最後に、本記事で使用した商品を下に挙げておきます。
部品選定・自作の参考にしてみて下さい。
[Amazonで購入したもの]
①② シャフトφ10 / アルミ丸棒φ25
回転軸の作製には以下の2つを使用しています。
(※ただし、芯を出すためには旋盤加工が必要です)
また、以下に述べている接着剤(中央)と併用することで、
更なる振動抑制に繋がります。
③ 接着剤
それぞれに長所短所があるため、
使用箇所に応じて使い分けていきます。
左:「シャフト – アルミ丸棒」間での接着
中:「回転軸 – ベアリング」間での接着
右:「丸鋸(MDF) – ベアリング」間での接着
④ 鋸刃
「モトユキのグローバルソー100mm」を使用しました。
これは、木材以外にもアルミ板や鉄などの素材も切断できる仕様であり、
加工の幅を広げてくれます。
[Aliexpressで購入したもの]
⑤⑥ スピンドルモーター / アルミプーリー
モーターはAmazonでも購入することができますが、
「価格」が倍ほどするので、Aliexpressでの購入がおすすめです。
(※納期は2週間程度かかります。)
アルミプーリーに関しては、丸ベルトに対応した品を購入できます。
Amazonでは、タイミングベルト用のものが多いので注意が必要です。
[楽天で購入したもの]
⑦ ベアリング
複数個購入しても、送料が210円と一定であるため、
大量購入すれば、Amazonよりも単価を抑えることができます。
[MISUMIで購入したもの]
⑧ 丸ベルト (φ5 / 150mm)
MISUMIでは、ベルトの周長を好きな長さで注文できるため、
設計の自由度がより高くなります。
ただ、伸縮性が無いため、
負荷が大きくかかる用途には不向きなベルトです。
[モノタロウで購入できるもの]
「モノタロウ」では、エンドレスタイプの丸ベルトがあります。
こちらは伸縮性があるため、大きな負荷にも対応しやすくなります。
ただ、周の長さが決まっているため、設計に制約がかかります。